以前、嗅覚とにおいセンサーについて整理し、においセンサーで酒の種類判別で実験をしてみたが、嗅覚に続いて味覚についても調べてみる。そして何とか自分の好みの日本酒をセンサーで識別できないかをトライしてみた。

味覚について

 味は味蕾(みらい)と呼ばれる味を感じる細胞の集まりが味の刺激を受けて脳に伝えることで感じることができる。味蕾の数は20歳までは平均245個あるらしいが、74歳以上になると88個と約35%まで減少しているらしい。

 味の種類は甘味、苦味、酸味、塩味、旨味の5種類ある。ただ味を感じるだけでなく、食べ物や飲み物の揮発性物質が口から鼻にさかのぼり、嗅覚で匂いを感じることができる。脳には単なる味だけでなく、嗅覚での匂いも加わって風味として記憶される。鼻をつまむと味を感じなくなるのはこのためである。

味覚の測定

 嗅覚と同様、味覚のセンサーも開発されており、この5種類の味をうまく調整することで、新しい製品やメニューを開発するなどといったことが行われているが、残念ながら、一般人には手の届くようなものではない。最近日本酒が好きなこともあり、色々な値を測定して、日本酒の好みをうまく表現できないかを試してみることにした。ちょうどHINEMOSの8種類のセットをもらったこともあり、このお酒では味のマップが公開されているので、これをうまく利用して独自のマップが作れればと思って初めてみた。

 Amazonで糖度計などを購入し、日本酒のデータを整備した。意味があるかどうかわからないものも含まれているが、今手に入るものでとにかくデータ化してみたという感じだ。

変数名説明
brix糖度計による糖度の値
alcohol1エチルアルコール濃度計によるアルコール度の値だが、糖度の影響も受けるので、純粋なアルコール度数にはならず高めの値になる
alcohol2ラベルに書いてある酒造メーカ公表のアルコール度数
pHご存知pHで7より小さいと酸性に、大きいとアルカリ性であることを示す
TDS1水中に溶け込んでいるミネラルや塩、金属など溶存イオン物質の総量をppmで示したもの
TDS2上と同じだが、異なる測定器での値
serum血清タンパク質の測定値
本来旨味成分であるアミノ酸を測定したいのだが、手軽に測定できるものがなかったために利用した(日本酒の原料にはグリブリンが含まれているらしく、酵母によって分解されてアミノ酸になるらしいが、この測定に意味があるかは疑問はある)
ES水の中の電解質の測定値
orp水の酸化力や殺菌力を表す指標で、この値が高いほど酸化力、殺菌力が強い

 測定した日本酒の種類は以下のとおり。HINEMOSは8種類あったが、スパークリングで炭酸の入っているものやかなり甘めの味のものもあり、糖度計での値がかなり他と傾向が違ったり、測定できない項目が出てきたので、4種類だけ使用した。(ただし残った4種類は辛口のものばかりで、もう少しばらつきが欲しかった)

  • 1カップ大関
  • HINEMOS 1, 2, 9, 11の4種類
  • 田酒(特別純米酒):一番好きな酒、今回は2種類用意
  • 福寿(純米吟醸):好みの酒
  • 善吉(純米吟醸):好みの酒で、田酒に近い
  • 京都匠(大吟醸):好みでなかった酒
  • 鳥海山(純米吟醸一穂積):好みでなかった酒

データの分析

 まずはデータの相関を見るために散布図を作成してみた。これを見るとESとTDS2は相関度が強いので、TDS2は削除することにした。

 まずは主成分分析(Principal Component Analysis)を行ってみる。主成分分析は他変数のデータの次元を集約して、主成分を作成する手法。第1主成分と第2主成分を使い、散布図を書いてみたのが以下の図である。作成された主成分は、変数の組み合わせなので、それ自体の意味を知ることはできないが、田酒の2種類が遠くに離れていて、自分のイメージしている味にうまく分けられてない。

 次にt-SNE(t-distributed Stochastic Neighbor Embedding)を使ってみる。t-SNEは主成分分析と違い、高次元空間で近くにあるデータを低次元空間でもできるだけ近くに、遠くのデータはなるべく遠くなるように配置するアルゴリズムで非線形にも対応している。こちらで同様に散布図を書いたのが下の図になる。こちらだと、自分の好きな日本酒4つ(田酒、善吉、福寿)が左上に集まっている。自分の感覚的にはこちらの方がしっくりくる結果になっている。

まとめ

 意味のあるデータが取れているのかどうかの疑問はかなりあるが、まずまずの結果は得られた。今後、傾向の違う辛口のお酒や自分の好みの田酒に味が似た酒を追加して、この方向性で自分の味覚にFitするものなのかどうかを確認していきたい。